不良の有岡について。
『部活あるし、邪魔しても悪いから断ったけど。』
明るく言われる。
ベンチから立ち上がって、幼稚園の方へ足を進めた。
「じゃあ、部活頑張って。」
『あ、有岡今出てった。』
それを聞いて、早足になった。
有岡に見つかったら、何かと面倒くさい。
面倒くさい、よりも、嘘がバレるのが怖いと思った。
幼稚園の前に、シルバーのセダンが停まっていた。扉に寄りかかるようにしている女性は、誰が何と言おうと弟の母親だ。
私はその前を、挨拶もせずに園に入っていく。
弟は教室で絵本を読んでいて、周りに有岡も先生も居なかった。
「お母さん、来たよ。」