不良の有岡について。
靴箱の方へ歩いていく。
最近いろんなことがあったなあ、と思い返す。
「哀河。」
「大丈夫だから。」
結局、知られてしまうのか。
有岡は複雑そうな顔をした。本当、不良には見えない。喧嘩をした傷に貼られた絆創膏の存在も忘れ去られてしまいそう。
対して、私は。
私は何もない。
「あれ、私の母親なの。だから先生、大丈夫。ごめんね、有岡。」
空っぽからでた、空っぽの言葉。
笑顔を見せれば、有岡はただ手を掴んでくれた。先生は何も言わずに頭を撫でてくれた。
「ちゃんと、決めたことなのね。」
頷く。そうなの、私と弟が、自分で決めたこと。
それは、誰に否定されても覆させない。
「帰ろう。」
有岡に、引っ張られた。