不良の有岡について。
玄関から背中が見えなくなるまで見送る。
見えなくなるって言っても、突き当りのエレベーターを乗るまでだけど。
「じゃあ、帰る」
「は?」
「うん?」
本気で帰ろうとしていたらしい哀河がきょとんとした顔を見せる。
「…お茶でもどうですか」
らしくない理由をつけて哀河を玄関に、半ば強制的に入れる。
「…うちにもお茶はあるんで」
「いや、俺が哀河サンと一緒に居たいんですけど」
靴箱に手をかける。
目を泳がせて、腕を俺の胴にまわして、ぎゅーっと抱きつかれる。