不良の有岡について。
「あ、」
「おねーちゃん!」
低い声と黄色い声が同時に耳に入ってくる。視線を上げると手をぶんぶんと元気良く振る弟、と、
…クラスメート。
さっと自分の表情が消えたのが分かった。
「おねーちゃん、遅い!」
「ごめん、」
「なさいは!?」
「なさい。」
五歳のくせに一丁前に生意気。それでも、屈むと腕に飛び込んでくる。
まだ五歳、だ。
「あの、ありがとう。」
こっちを未だきょとんと見ているクラスメートの不良、有岡(アリオカ)に言う。どこで会ったのか分からないけど、弟と一緒に居てくれたらしい。