不良の有岡について。
磨き終えて、洗面所に行く弟の背中を見送る。
「哀河家って、親は?仕事か?」
今まで有岡から聞かれなかったことを聞かれる。最初に聞かれなかったから、聞かないのかと思ったのだけど。
「死んだの。あたしが中学の時。」
笑って答える。
「…悪い。」
「なんで有岡が謝るの?変なの。」
チャンネルを回そうとリモコンを手に取ると、その手を掴まれた。
「何か見たいのがあるの?」
「そうじゃなくて、」
ここ数日間で、こんなに人との距離が縮んだのは初めてだ。掴んだ手は動かない。
「笑って言うなよ。」