不良の有岡について。
ほら、と弟の頭を下げさせる。
「おにーちゃんありがと。」
「別に。」
抑揚の無い声。この人、こんな声なのかと今知る。
確か一年の時も同じクラスだった気はする。でも、蘇る記憶はぼんやりとしていた。
「じゃあ。」
「またね!」
さっきと同じように、ぶんぶんと元気良く手を振る弟。
私は反対の手を引っ張って、ゆっくりと歩きながら家路を辿る。
「じゃあな。」
なんて、呟かれた有岡の声なんて空耳だと感じながら。