不良の有岡について。

家に着く直前、私は口を開いた。

「その傷は、由比さん?」

直球加減に驚いたのか、目を丸くした有岡。私と手を繋ぐ弟は、興味が無い様子で空に走る飛行機雲を見つめていた。

「…そうだけど。」

「原因は。」

「別れたいって、言ったから。」

すっぱりと言葉が出る。私は思わず、目を伏せてしまいそうになる。

「私が、昨日、あんなこと言ったから?」

…そこまで私は自惚れられ無いけれど。

由比さんとのタイミングが合いすぎる。それに、もしも私の言葉が引き金となってしまったなら、由比さんはどれだけ心が痛んだのだろう。



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