不良の有岡について。
「あ?」
不機嫌そうな返事がくる。私はドライヤーを棚に戻しに行こうと立ち上がると、手首を引っ張られた。
有岡を真っ直ぐ見る。
「二股なんかしてたわけねーだろ。」
「じゃあ、喜美って、」
「弟の幼稚園の先生、で俺の姉貴。」
私は固まった。
落ち着け、と再度有岡の前に座る。それでも手は離されなかった。
先生って、もしかして安藤喜美先生のこと?
「でも、名字が…。」
「義理の姉貴なんだ。」
目の前の有岡からは、うちのシャンプーの香りがした。弟も私も使っているやつ。