不良の有岡について。

「あ?」

不機嫌そうな返事がくる。私はドライヤーを棚に戻しに行こうと立ち上がると、手首を引っ張られた。

有岡を真っ直ぐ見る。

「二股なんかしてたわけねーだろ。」

「じゃあ、喜美って、」

「弟の幼稚園の先生、で俺の姉貴。」

私は固まった。

落ち着け、と再度有岡の前に座る。それでも手は離されなかった。

先生って、もしかして安藤喜美先生のこと?

「でも、名字が…。」


「義理の姉貴なんだ。」


目の前の有岡からは、うちのシャンプーの香りがした。弟も私も使っているやつ。



< 64 / 256 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop