不良の有岡について。

有岡は、強い。私が考えているより、ずっと。

ドライヤーを洗面台の棚に戻して、リビングに戻ると携帯をカチカチと打つ音が聞こえた。

…そういえば、有岡の姉が安藤先生なのだとしたら、もしかして私の家のことを…。


“冷たい人間ね、あんた”


チカチカと、脳裏に蘇る場面。場所。言葉。

視線を伏せて、眉を顰める。

私は、何も変わらない。

「哀河、今日泊まっていい?」

「いいけど。」

「いや、嘘。」

キョトンと有岡を見れば、キョトンと見返される。

「あー…そうなんだよな。この手は哀河には効かないんだった。」



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