ケモノ女が愛するオトコ〜草食男子の扱い方〜
私はそっぽを向いたまま、涙を堪えた。
もう、側にはいないくせに。
私を突き放したくせに。
散々、昼夜を問わずに甘やかした後で、あっさりと放り出したくせに。
「……そうですか。
……じゃあ、俺戻りますね。
それじゃ」
ペコリと頭を下げると彼はオフィスに向かって歩き出した。
………。
何なの、これ…。
一体あんたはどうしたいのよ…。
行け、と言われれば去り、
欲しいと言われれば与える。
だけど時々、スルリとうまく交わしてすり抜ける。
こんなにイライラする男に出会ったのは初めてだ。
私を翻弄し、前を見えなくする。
「藤崎!」
私は大きな声で彼を呼んだ。
彼の足が止まる。
お互いに背中を向けたままの姿勢で話す。
「このまま行くつもり?
今の私は…一人にすると何をしでかすか分からないわよ……!」