ケモノ女が愛するオトコ〜草食男子の扱い方〜


……最後の賭けだ。

彼の真面目で誠実な心に訴える。
私にはもう、藤崎を引き止める材料がない。


私は拳を固く握りしめ、俯いたまま彼の返事を待った。


………。
彼は……何も言わない。

しばらく待ったけど、藤崎の声は聞こえない。


……これが答えね。
もう、私にはいい加減愛想を尽かせたのだろう。

最後にはトイレで乱闘騒ぎだもんね。
自分でも呆れるわ。


………ふわっ。

その時、背後から優しく包まれて目を開く。

「!!!」

「意地っ張りな人ですね、本当に。

……行ってほしくないのなら素直にそう言うんですよ。
あなたのお願いなら……断るはずがないのだから」

耳の側で藤崎がそっと囁く。






< 58 / 146 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop