正義たるは偽善なり
後に残ったのは、黒くなった男の死骸だけである。
人型に残ったそれは生々しく、酷い臭いを発していた。
「…ほんっとうに、君は容赦がありませんね」
振り返ってみれば、殺人者がそこにいた。
ランプを持っているように見えるが、それは魔術で固められた炎の塊だ。
黒い短髪に紅い両眼、左手に握るのは騎士団の証たる剣である。
「悪いな、人を貶めるのが悪魔の役目だ」
悪びれもせずに言う。
アルファは溜息をついて相槌を打った。
死を望み、死を与え、死を見せる、彼こそまさに神に敵対する悪魔と呼べる。
おそらくどう頑張ったって彼は聖人になり得ないし、きっとならない。
自分がそういうのに無縁だって信じて疑わないし、悪でありたがる子なのだ。
「そんなんじゃ地獄行きですよ」
「光栄だ、我が故郷だからな」
「下らないこと言ってないでくださいよ、気に入ったんですか『悪魔!』って第5隊長に言われたの」
「あの敗北感たる顔ったらないよな」
「鬼畜め…」