正義たるは偽善なり
「死ぬんですか」
彼はそう問うた。
その声音は真剣で、男をからかっている様子もない。
加えて子供のような無邪気さもない。
真面目な態度で青年が問う。
『お前は死ぬのか』、と。
その質問が特異に聞こえるのは、死するという行為が生き物の選択可能領域ではないからだ。
死ぬか否か…そんなものは、創造神の翼の元に、生き物たる我らに選択肢はない。
「魔術師〈神に背いた者〉に問う質問じゃねえな」
自嘲気味に男は笑い声を漏らした。
「だから最後のチャンスです」
「…チャンス?」
男は暗闇で遮られ、見えない筈の彼の顔を見上げた。
碧い両眼が爛と光っており、その様子は獲物を前にした獣同然。