正義たるは偽善なり
「そう、魔術は背徳です」
呼吸が余計に荒くなった男を見下ろして、彼は悲しそうに口を開いた。
「なぜなら神のご意思に逆らうから。
死を望む、死を与える、そして死を見せ恐怖を煽り、それを阻む魔術は生死を巡る輪廻の邪魔立てをするから。」
「俺は生きている人間を救うために魔術師になったのだ。
神なんてどうでもいい…」
「それは自己満足というものですよ」
彼は笑った。
自嘲している。
「生き物である以上、生があれば死もありうる、永遠に生存する者などこの世にあってはならないのがこの世のルールです。
ならば死を阻むのは、目の前で苦しんでいる人をただ悪戯に哀れんで生かしただけの偽善者です」
だから王は背徳と言った。
人を殺すのが罪ならば生かすのもまた罪だ。
医術とは違う救済方法を認めようとはしなかった。
「それは正義でなく偽善と呼ぶからだ」