正義たるは偽善なり
「そういうわけで君の意志が聞きたい」
もうじき、この男を殺す彼の上司がやって来るであろう。
死を望み、死を与え、死を見せる魔術師たる彼はきっと彼に生を望ませる猶予など与えない。
『生きたい』と願う意思があれば彼は生者だ。
過ちを許してくれる神ならば、きっと彼は救われる。
「君は死ぬんですか」
「俺は……」
じっと彼の両眼を睨みつけ、殺すように強く、唇を噛んでいた男の口が開いた瞬間である。
彼の顔が暗闇で浮かび上がった。
肩まで伸びた綺麗な金髪に、人畜無害そうな甘ったるい顔。
線が細く、その身体は黒のスーツを纏い。胸には紅い花に囲まれた『Ⅶ』という文字が刺繍されている。
騎士団の証たる剣の柄が、その腰にしっかりと携わっていた。
成程、偽善者な顔をしている。
そう男が納得した直後、男は身体が熱くなり、燃えているような酷い苦しみに身を投じた。
苦しくてもがく。
でも拭えないこの熱さは、即ち罪の具現か。