片翼の天使たち~fastlove~
「遥翔が待ってる。」
「え__?」
透くんは1言だけそう言うと私の背中を押し、扉を開けると、私を部屋に押し込んだ。
「キャッ!」
「んじゃ、頑張ってね~」
呑気に手を降る透くんに圧倒された私は、半分意識がなかった。
頑張る?
なにを?
「おい、いい加減どけ」
頭上から聞こえてくる低い声。
ポタポタと落ちてくる雫。頬にあたる、温かくて硬いもの。
顔、あげられない…。
「おいサクラ、聞こえてんだろ?」
「…分かってる」
私は顔を伏せながら遥翔の腕の中から抜けた。
…最悪。
透くんに押されて躓いて、まさか遥翔に抱きついちゃうなんて…。
顔をゆっくりあげると、シャワーを浴びていたのか、上半身裸の遥翔が不機嫌そうに水を飲んでいた。
「来たんだ」
「家は嫌いだから」
挑発的な遥翔の口調に、つい強気で返すけど…。
「無理してんだろ、お前」
「…は?意味、不明……」
隠しきれない。
あんたが、遥翔が……偽って来た“桜羅”を壊したから。
遥翔の温かい手が髪を撫でる。
なに、こいつ…。
なに、なに、なに…なんで?
なんで私は、こんなにも安心してしまうんだろう…。