片翼の天使たち~fastlove~
まだ状況が理解できていない私を悟ったのか、遥翔は軽く一笑し、比較的穏やかな口調で話し始めた。
さっきまでの冷たい声なんて無かった。
「俺、サクラに呼び出されたあの日、期待してた。サクラに呼び出されて浮かれてたんだ……。」
嘘…。
遥翔がそんな風に思っていたなんて、知らなかった。
「でも、行ってみたら違った。そこにいたのサクラじゃなかった。……それが悔しくて、俺、どうかしてたんだ。…ちがう、もうどうでもいいと思ったんだ。」
私をギュッと抱きしめる遥翔の腕に、より一層力が加わって
苦しいくらい、愛おしかった。
「……スミレには悪いけど、俺、サクラが好きだ。」
切り捨てられると思ってした告白の時は、涙なんてこれっぽっちも流れなかった。
なのに
なぜだろう……
「サクラ…泣かないで」
嬉しすぎて
胸がいっぱいで。
温かい涙が頬を伝う。
まるで雨でも降るかのように、それは止まることを知らない。
「俺、ちゃんとスミレとケジメつけるから。だからその時は、俺と……付き合ってくれませんか?」
夢かと疑った。
けど、すぐに夢じゃないと気付けた。
あなたが。
あなたの体温が、とてもとても温かかったから……。