片翼の天使たち~fastlove~
学校に行く前に、美羽に電話しよう。
スカートを2回折って、ローファーに足を入れる。
電話帳で〝津崎美羽〟を開いてから、ケータイを肩と顔で挟む。
ピリリリリ…
『はい、もしもーし。桜羅ぁ!?』
朝からハイテンションでいつもと変わらない美羽の声に、安心して思わず口元が緩む。
「美羽?今電話平気だった?」
『うん!超暇だったー!ってゆか、珍しいね。桜羅から電話くれるなんて』
「…それなんだけどね」
私は、ゆっくりと昨日のことを話した。
遥翔に思いを伝えたこと
遥翔に「好きだ」と言われたこと
遥翔と付き合えたこと
そして、今日スミレと話し合わなければならないということ。
全部全部、包み隠さずに話した。
美羽だけには、隠し事なんてもうしたくなかったから。
『そっかぁ…。そんなことがあったんだ』
全てを話し終えると美羽は、まるで言葉を探すように言った。
『難しいからね…、恋って』
私もそう思う。
初恋は、まだ幼い頃だったから。
無邪気に、楽しいものだと、のうのうと思ってた。
でも、今だからこそ分かる。
恋って、難しいものなんだということを…。