片翼の天使たち~fastlove~
「なにかあったら美羽の相談してね!」
「うん、そうさせてもらう」
2人は笑い合った。
美羽が、美羽でよかった。
正直な気持ち、怖くて仕方がなかったんだ。
美羽が…私を拒否したらどうしようって。
すごく、怖かった__
でも美羽は、私の想像以上に優しい言葉をくれた。
「今日はもう帰るね」
時計の針が9時をさした頃、美羽が制服のスカートを直しながら言った
「うん、じゃあね」
美羽を送り出して、パタンとドアを閉める。
美羽がいなくなったこの家は、さっきの明るさなどもちろん無くて。
音もない、光もない、そんな闇の中へ放り込まれたような気がした
___と、いつもならそう思う。
両親がいない、この1人きりの部屋が虚しく感じる。
けど今日は違う
ハッキリここがちがう、そう言えるわけじゃない
ただ、分かる。
私…明日(みらい)を楽しみにしてるんだ……
初めて触れた人の温もり
遥翔や生徒会みんなの笑顔に、私はこれまでにない感情を抱いているのは確か
否定なんてできないし、自分自身気づいているから否定する気もない。
でもいまだに分からない
人を“愛”する感情が
愛されたことがない
だから愛し方を知らないなんて当然だ
人の温もりに触れてこなかったのだから
温もりを分け合うことの意味がよくわからない。