片翼の天使たち~fastlove~
第一章、【最強の人】
__大嫌いなあいつ__
__side桜羅__
学校へと前に進める重たい足。
教材を詰め込んだ、無駄に重いカバン。
通学路に響き渡る友達とおしゃべりを楽しむ声。
……そして、学校の前にズラリと並んだ高級車。
その車たちから降りてくる人たちは皆、執事にカバンを持たせ、1歩後ろで歩かせ、今日のスケジュールや人の顔と名前の一致を確認させたりする。
一般的に言うと、お嬢さまとお坊ちゃま。悪く言うと、世間知らずのなにも出来ない集団。
そういう親に頼ってばっかの人たちを見ると、吐き気がする。
「桜羅―!」
ボーっといつものようにそのくだらない光景を眺めていると、明るい声が私の名前を呼ぶ。
聞きなれた少し高めの可愛らしい声。
私は足を止め、駆けてくるその子のほうへと顔だけを向けた。
「おはよ、美羽」
「おはよっ!」
この元気な子は、私の親友であり、幼馴染。
昔から今も変わらず、私の良き理解者。
津崎美羽
(つざき みう)
私より小さな背。可愛く、愛らしい顔立ち。
明るい性格もあって、男子ウケはナンバーワンなんじゃないかって思う。
でも美羽は、誰とも付き合ったりしてない。
それが疑問だけど……私も美羽が離れて行っちゃうのは嫌だし、あんまり気にしないようにしている。
ふと、小さな美羽に視線を向けると、なんや嫌そうな顔で一か所を見ていた。
その視線を追うと、私もつい「あ…」と声を漏らす。
美羽が見ていたのは、さっきの高級車が並んでいる道路。
「あ~ぁ、同じ学校なんて嫌だな」
カバンを両手で後ろに持ち、ブラブラと口を尖らせながら美羽は校舎へと歩き始めた。
私たちの通う学校…、“清明高等学園”は、日本有数のお金持ち学校として知られているけど、実際、成績もよくてお金持ちが集うのは、別校舎の特進生たちだけ。
つまり、私たちが通う普通科は偏差値もそこそこだし、お金持ちっていうわけでもない。
そんなこんなで特進生たちからはバカにされるし、教師たちも特進生びいき。
特進生があれと言えば、あれになる。
これがいい、そう言えば、覆すことだって簡単。
ホント…、イライラする。
特にあいつ…___。