片翼の天使たち~fastlove~
淡々と言葉を発していく遥翔。
涼しい顔でインターホンを鳴らした。
私はただ遥翔の後ろに隠れて、唯が出てくるのを待つ。
なんで私なのか。なんで「来ない」はずの唯を誘ったのかは謎だけど。
まぁ唯が嫌いなわけじゃないし。
嫌いになるほど私は唯を知らない。
「…はい?」
ガチャっと扉が開くと、立っていたのは眠たそうに目をこする、ラフな格好の唯。
昨日の制服姿からは想像も出来ない。
「あんたらなんでいんの」
冷たく、冷淡な声。
寝起きなのか、少しかすれた声が色っぽい。
ホントに高校生?そう錯覚させるような雰囲気と周りを圧倒するような存在感。
ちょっぴり怖い、無表情な唯。
無意識のうちに私は遥翔の後ろに隠れていた。
「俺行かないって言わなかった?」
「あぁー、言ってたな」
いいのか、それで…。
入り込めない2人の違うオーラ。
遥翔は…幼い。
まるで無邪気な子供の様に。
目が離せなくて、人を引き付ける魅力がある人。
唯は…圧力がすごい。
近づいたら怪我でもしてしまうんじゃないかってほど。
全てが謎で。今何を考えているかもわからない。
「ま、いいじゃん。唯も行こうぜ」
「…外で待ってろ」
「おぉっ」
冷たく言うと、唯はドアを閉め、部屋の奥へと入って行った。