片翼の天使たち~fastlove~
「なーにやってんだよ、バカが」
「へ?」
涙目で見上げた私。
颯爽と私の前に現れたのは、着替えて私服の唯と、意地悪に笑いながらエレベータの扉に手を添える遥翔。
もしや……
「今の遥翔!?」
「は?気づかなかったのかよ」
満足そうなこいつの笑顔は、明らかに確信犯。
「お前、マジアホだな」
この言葉にピキッと来た私は、遥翔の奥にいた唯の手を引っ張ってエレベーターにいれる。
驚いてる遥翔に目もくれず、何の隙も与えず、扉を閉めた。
「ちょっ!バカかお前!!おい、サクラ!!!」
「自業自得だ、バーカ!!」
私が1階のボタンを押し、下がっていくエレベーター。
だんだんと遥翔の顔が見えなくなっていく。
ふふんっ!ざまーみろ、遥翔め!!
勝ち気で腕を組んでいると
「ぶっ!!」
思わず吹き出しました。みたいな笑い声が聞こえてきた。
急いで振り返ると、いつもの冷静な表情を崩し、口元に手を当て笑っていた。
唯がいたの、忘れてたー…。
「ゆ、唯!笑わないでよ!!」
必死にそう言ってみるものの、彼の口から出てくるのは
「無理。あれを笑わなくて何を笑えばいい?」
と、完璧バカにしている口調。
これは止まらないな。
そう思った私は、急に自分がしたことに恥ずかしくなり唯に背を向けた。