片翼の天使たち~fastlove~
「やっと来たか」
1階のホールで待っていた3人。
……なんかもう、突っ込む気力も失せてきたわ。
ここマンションよね?
なぜ、共同スペースにソファーやティーセットがあるのかしら。
「榊枝、これ下げろ」
利一が執事らしき黒いスーツを着た男の人にそう言うと、目にもとまらぬ速さで片付いたティーセットたち。
あ、ソファーは備え付けなのね。
はぁー、ホント理解不能な世界だ。
「おせぇーよ、桜羅ぁ!」
ボケらーと不思議すぎる光景を眺めていると、透くんの少し高めの声が私に飛んでくる。
「え!?私のせい!?」
寝坊したの唯なんですけど!?
「だって唯は起きてたんだろー?」
いやいや、その情報間違ってますって……
「どこで聞いたの、そんなこと」
「さっき遥翔からメール来たんだよ」
「なんて?」
「唯は起きてるけど桜羅がお腹すいたって言うから飯食わせてたって」
「……」
あんのヤローーーー!!
「それ間違いメールだから!ね、唯」
唯に同情を求めてみる。
相変わらずの無表情で、さっきの笑顔はどこへやら…。
冷たい目が私を突き刺す。
目で必死に
『うんって頷け』
って合図したって、このお坊ちゃまは……
「そんなことねぇけど」
「ほーらな!唯が言ってるし。あ、女だから気にしてるとか!?」
透くんの言葉なんてもはや無視。
流せ、そんな勢い。
……唯、遥翔と同じ人種だな。
唯に同情を求めた私がバカだった。