片翼の天使たち~fastlove~
遥翔の専属執事の藤堂(とうどう)さんがドアを開けてくれて、私は黒い車に乗り込む。
無駄に広い車内と遥翔と私の微妙な距離。
「…ねぇ」
「…あぁ?」
「なんでもない……。」
……。
超居心地悪い!!!
チラッと隣にいる遥翔を横目で覗き見ると、思わず魅入ってしまう。
人間離れした、そう言っても可笑しくない程整っている顔。
高い鼻に切れ長の二重の瞳。透き通るような繊細な髪。
……ホント、悔しいくらい綺麗なんだよな、こいつ。
「なんだよ」
「げ…。気づいてたの?」
「見すぎ」
長い足を組みなおして、フッと軽く笑う遥翔。
こんな余裕かまして答えてる私だけど、内心バクバクだ。
だって急にあいつがこっち向くから……。
「見すぎて何が悪いわけ!?」
「なんでムキになんの」
「…っ」
言われてみればそうだ。
なんで私、こいつにからかわれてムキになってんだろ。
バッカみたい……。
「顔赤いけど」
肘をついて、顔だけ私に向けた遥翔は綺麗に微笑んで見せた。
「赤くないし!!」
咄嗟に頬に手を当てた。
赤くなってるかは分からないけど、いつもより自分の顔が熱くなっているのが嫌でも分かった。