片翼の天使たち~fastlove~
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「ちょっと、どこまで連れて行く気!?」
私の声になんて反応せず、振り向きさえもしない時枝。
ただ私の手を引いて、黙々と足を前に進める。
このだだっぴろい校舎の全てを知り尽くしているのは、生徒会長である、時枝遥翔だけ。
今どこにいるのかさえも私は分からない。
だけど、だんだんと校舎の造りが変わって行っているのは分かる。
天窓に真っ白いカーテン。
聖堂を抜けると、大きなシャンデリアが目に入る。
見たこともない光景……。ここまで来れば、さすがに分かる。
いや、嫌でも分かる。
ここが…特進クラスの校舎だってこと。
あまりの光景に私は目を丸くさせながら歩いた。
__ドンッ
「ぶっ!急に止まんないでよ!!」
「うっせーな」
時枝が足を止めたのは、茶色い大きなドアの前。
ドアって言うより、扉っていう言葉のほうがあっているかもしれない。
その扉には鍵穴も、ドアノブもない。
「入るぞ」
なんで?
っていうか、どうやって?
いっぱい疑問が浮かんでくるけど、まだ私の手首は掴まれたまま。
離してくれる気配すらも見せない。
私に分かるのは、“確実に怒らせた”ってこと。
多分時枝は、私の態度が気に入らなかったんだ。
生徒会長だから、普通科の生徒を引きつれようが、普通科の校舎に入れようが自由なんだと思う。
パッと、時枝を見ると、小さな台の上に人差し指をかざしていた。
すると、扉は音をたてて意図も簡単に開いた。
嘘…。
なんだ、このシステム。
まさかの指紋認証かよ…。
ホント、お金持ちの考えはわけわからない。