片翼の天使たち~fastlove~
___シャッ…
「また泣いてる」
「……え…っ」
「もう、やめれば?アンタが辛いなら、やめれば?」
閉ざしていた白いカーテンを開けて
立っていたのは唯だった。
ねぇ、どうして…?
どうして唯は、いつも私の前に現れるの?
「先生が隣は香月くんだって……って、あ…。」
「気づいた?」
「う、うん……。なんかゴメンね。」
「まさかフルネームで覚えられてねぇとわな」
「う゛…。ごめんなさい」
唯が〝香月〟だってこと忘れてたよ。
仕方ないじゃんっ…。始めっから名前呼びだったんだから!
……って、開き直るところじゃないし…。
「別に。泣きやめば、それでいい」
「へ…?」
「アンタが泣いてるから、毎回調子狂う。うるさいのはいつもうるさい奴でいろ」
唯はいつも無表情な顔を少しだけ緩め、そっと、微笑んだ。
唯……もしかして、私のために?
それなら
「唯ってすごい不器用なんだね」
「…なんか言った」
「ちょ、疑問符くらいつけてよ!」
「アンタが不器用とか言うからだろ」
「ぶっ!!」
唯は私の頬を両手で挟むと、真剣な顔に戻った。
「ひゅい……?」
「アンタ、やっぱ逃げんの得意だな」
さっきの温かさは、なんだったの…?
冷たい手
冷たい瞳
…もう、なにも映っていないように
なにもかもを捨てたような、漆黒の瞳。
ゆ、い……____?