片翼の天使たち~fastlove~
「早く入れよ」
時枝に急かされ、部屋に入る。
そこは見たこともないような部屋だった。
この校舎自体すごいって言うのに、この部屋は別格って感じ。
ふかふかそうなベットに、何個もある刺繍がほどこされたクッション。
何畳あるんだってくらい広い部屋。
テレビとクーラー、シャワーまでついてる始末。
「あっれー?結局連れて来たんだ、この子」
「あぁ。まぁな」
ひょこっと部屋の奥から出てきた男の人。
カッコいいっていうより、可愛い系に入るんだと思う。
私と背は同じくらいだし……。
「全員そろってるか?」
「遥翔が呼び出せば来ない奴なんていないだろー」
「唯は?」
「あ、来てねーや」
「だろうな」
勝手に話は進んでいるみたいだけど、私は全く分からない。
怒らせただけなら、この部屋に連れてくる必要ある?
私…授業あるんだけど。
そんなことを頭に思い浮かべながら、時枝たちの後をついて行った。
足を進めると、もう1枚扉があることに気が付いた。
可愛い系の男の人がドアに手をかけ、勢いよくあける。
「遥翔が来たよー!!」
その言葉に敏感に反応するかのように、部屋にいた2人の人が振り返った。
「遥翔、おせぇよ」
「あいつが手間とらせっからだよ」
不機嫌そうにブツブツ言いながら、時枝は専用であろう椅子に座り足を組む。
そして、漆黒の綺麗な瞳で、茫然と立ち尽くす私を映した。
ニヤッと口角あげる時枝に、鳥肌しか立たない。
冷や汗が輪郭をなぞるように伝った。