片翼の天使たち~fastlove~
「井本桜羅」
「…なに」
私を低い声で呼びつけると、時枝は私のほうへ何かを投げつけた。
咄嗟にキャッチしちゃったけど、これなに……?
手の中で丸まったものを広げる。
「…は?」
思わず声が漏れてしまう。
だって…
「お前、今日から特進クラスの生徒だからな」
それは、特進クラスのネクタイだったから___。
「なんで!?意味わかんない!!」
私の家はお金持ちじゃないし、むしろ貧乏で困ってるのに。
頭だっていいほうじゃない。
……特進クラスなんて無理!!
「俺の決定は絶対だ。それにお前は学費がタダになるんだ。俺ら生徒会の秘書を1年間勤め上げることが出来ればな」
足を組み換え、面白そうに微笑を浮かべながら、時枝は私を見る。
時枝の決定は絶対?…そんなこと知ってる。
それに学費ゼロって、それほど助かることは無い。
私は言葉を返せず、俯いた。
「じゃー、自己紹介からいっちゃう?」
私の気持ちとは裏腹な、能天気な声。
パッと視線を帰ると、さっきの可愛い系の男の人が立っていた。
「僕は会計担当、楠木透(くすのき とおる)!よろしくね♪」
生徒会は、合わせて4人。
私を入れて…5人になるのかな。
あ、でもさっき“唯”って人が来てるとか来てないとか…。
うーん、よくわかんない。
「俺は書記で、水谷利一(みずや りいち)。こんなんだけど、よろしく。」
次に立ったこの人は茶髪の美少年。
楠木くんと肩を組んでるから、兄弟のように見える。
「んで、俺は、透と同じ書記の相原ひなた(あいばら ひなた)」
赤茶の髪の人で、一通り、自己紹介終わったみたい。
これって、私も言ったほうがいい?でも、私できればお世話になりたくない…。
「ほら、次!」
「え、あ…」
楠木くんに急かされて、私はなぜか1歩前にでた。
早く帰りたい、そんな気持ちを抱いて。
「井本桜羅、です…。」
って、こんな自己紹介より…
「私は普通科には戻れないの?」
大事なのはこっちでしょ!
「俺がクビにしたら戻れる」
「今すぐクビにしてよ!!」
「バカか、お前は。あんとき言ったろ?後で痛い目見るって」
「……っ」
悔しい。
大嫌いなこいつの言いなりなんて、嫌よ。