片翼の天使たち~fastlove~
「はい、着いたー!」
「…なにここ」
私がスミレに連れてこられたのは、なんだか怪しい暗幕がドアのガラスに張られてる部屋。
もしかしてお化け屋敷?
…無理。
私、この世で1番お化けが無理!!
「ほぉらっ!入った入ったぁ~!!」
___ドンッ!
背中を押され、すぐにドアが閉まる音。
いやぁぁ…、無理だって。
目開けてらんないよ!!
「なにしてるの?行くよ」
「…スミレ、お化け無理っ」
「は?何言ってるのサクラ」
スミレ、声が少し低くなった…。
怒ってる?
恐る恐る強く瞑った目を開けると、そこは私が予想していたようなうす気味わるい空間じゃなく
花やお菓子の飾りで埋め尽くされた、綺麗な部屋だった。
「サクラ、なにか勘違いしてない?」
「か、勘違い……?」
そのまま聞き返すと、スミレは呆れたように首を振った。
「ここは衣裳部屋。サクラ今まで大忙しで1度もやったことないから、連れてきたかったの」
「そ…なんだ。私はてっきり、お化け屋敷に強制連行されるのかと思ってた」
力が抜けた声で言うと、スミレに「バッカじゃない」と、大爆笑されてしまった。
「ほら、サクラ。このワンピとかどう?」
スミレがたくさんある服の中から選んでくれた、淡い桜色のワンピース。
「サクラって名前にピッタリだし。それに、サクラ髪が深いブラウンだから」
ニコッと笑い、鏡の前でワンピースをかざしてくれるスミレ。
その優しさに少し……胸が痛んだ。