片翼の天使たち~fastlove~
「ね、サクラ。あたしサクラにお願いがあるんだけど」
「うん。なに?」
スミレが、かぁあっと顔を赤く染める。
なんか、嫌な予感……
「あのね…」
スミレ…
やっぱりなにも、言わないで。
「協力してほしいの。」
もぉ、ダメだ……。
私には、出来ない。
やっぱり…出来ないよぉ……。
「遥翔くんを呼び出してほしいの」
私に…告白なんて。
する勇気も
スミレを裏切る勇気も
なんも、ない…____。
「サクラ…?ダメ、かな?」
嫌だよ…。
協力なんて、出来ればしたくない。
だって、スミレが傷つくから。
だけど。
私はそんなこと知らせてあげられるほど、優しい人間じゃない。
「ううん、いいよ。」
私は
自分勝手だ……。
やっぱり
出来ないよ……。
「遥翔に伝えとくね」
どちらにも、嫌われたくない。
どちらにも、転べない。
……スミレを失うか
__遥翔を失うか
そんなこと、選べないし
選びたくない、考えたくもない。
だから……
「成功するといいね!!」
スミレ…お願い。
こんな最低な私を、どうか許して。
教室の窓がわずかに開いていた。
その隙間から、春風が入り込んでくる。
その風は、温かく。
その風は、冷たく。
私の心を、抜け出せない迷路に連れ込んでいくようだった。
春風祭まで、あと1日____。