片翼の天使たち~fastlove~
___バンッ
私はドアを勢いよく開けると、人の目なんて気にせず走った。
広い校舎を駆け抜け、衣装を着替えることもなく、まだ文化祭で盛り上がる学校を飛び出した。
日差しが強い。
春の終わりの、陽気。
これからどこへ行こう、とか
これからなにをしよう、とか
そんなことは、考えていない。
…でも、走ったんだ。
居たくなかったんだ。
遥翔とスミレが、2人一緒に回るであろう、文化祭。
そんな場所に1人でずっといられるほど、私は強くない。
ましてや、幸せそうに、遥翔の横で微笑むスミレに
〝おめでとう〟
なんて、そんな言葉はかけられない。
きっと、私の小さな心は
醜い感情で埋め尽くされてしまう。
そんな私を
大切な2人には見られたくない。
だから今は、逢いたくない…____。