ショコラ~愛することが出来ない女~

耳に響く音は、いつしか自分のあえぎ声ばかりになっていた。

彼は上手に私を調理する。
こんなもういい歳の女だっていうのに、若いころと変わりなく丁寧に。

結婚する前と離婚した後、彼以外の男の人に抱かれた事は何度かあるけど、隆二くんほど上手に抱く人は見たことがない。

薄暗い物置に似た部屋で、ただひと時の快感を求めあって、絶頂を得る。


力なく崩れるように寄り添う二人の間にあるのは、荒い呼吸音。

それでも隆二くんは私にキスをするのをやめない。
それは行為の最中のような、深く何もかもを暴くようなものではなく。
慈しみを込めた、軽い優しいキス。


「愛してるんだよ、康子さん」

「隆二くん」

「戻っておいでよ」

「……ん」


つられるような感じで返事をする。
だってこのキスは本当に惜しい。


「ね、康子さん。約束」

「うん」


強く彼にしがみついた。
それで彼が自分のものになるなら、どんなに良いだろう。
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