ショコラ~愛することが出来ない女~

 最寄駅はJRが電車が交差する駅だ。
一つは会社の方へと繋がる線。
もう一方は……。


「康子さん、どうかしました?」


振り向きざまに尋ねられて、慌てて首を振る。


「何でもないわ。早く行きましょう」

「こっちですよ」


それは、『ショコラ』の最寄り駅のある路線だ。
私の家へは、そこで乗り換えて別の路線に乗ると帰れる。

もしかしたら庄司くんはそこまで計算に入れているのかもしれない。


「この駅裏に有るんですよ」


そう、彼が笑顔で示した駅は、『ショコラ』の最寄り駅。
確かにこの駅界隈の店なら、知らないのも頷ける。

ここは、隆二くんと蜜月の時はまっすぐ『ショコラ』に向かうし、そうでないときは絶対に降りない駅だから。

落ち着かない気分で彼の後に付いて行く。

『ショコラ』はまだ営業中のはずだから、隆二くんが通ることはないだろうけど。

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