ショコラ~愛することが出来ない女~

庄司くんは私の好みを確認しつつ、適当に注文してくれた。

そうして世間話が終わるころには、焼き鳥とサラダ、おにぎりなどそれなりにバランスの整った食事が目の前に揃う。


「おいしい。庄司くんは良い店知ってるわね」

「結構グルメなんですよね、俺。っても、実はきっかけは康子さんの記事なんですけど」

「私の?」

「ええ。まだ社会人なりたての頃、安くて良い店発掘しようと思って買ったグルメ雑誌で、一際目を引く記事があったんですよね。
なんていうか、パワー感じるような」

「……」

「行ってみて食べて。なんて言うか納得した、そんな記事でした。
気になったので名前をチェックしてたんですよ。その後も『桂木康子』が記事を書いた店は結構行きました」

「そうなの?」

「ええ。その後は趣味になっちゃって。自分で良い店捜してはメモってって感じです」

「それは、……嬉しいかも」


勝手に顔がにやけてしまう。
中々自分の記事が良かったなんて言ってもらえることは無いから。

あの頃のがむしゃらに書きまくっていた自分が少し報われたような気がする。


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