ショコラ~愛することが出来ない女~
視線を感じて顔を上げると、庄司くんがこっちをじっと見てる。
「なによ」
「や、可愛いですよね。そういうとこは。
康子さんって何かツボだよなぁ」
「からかうのやめなさい」
「からかってはないです。本気」
「ウーロン茶で酔わないでよ!」
ドスっと言う音がするほどの勢いで彼の背中を叩く。
ちょっとむせたけど大丈夫かしら。
おかしいわね。
照れ隠しに軽く叩いただけなのに。
「だから、出版業界に転職を考えた時に真っ先にこの会社を受けたんです。
そして今回の辞令。俺は嬉しかったんですよ。あの『桂木康子』の下で働けるなんて」
「……幻滅したんじゃないの? こんなおばさんで」
「いや。むしろ憧れが恋に変わりましたね。15歳差って言ったって、今一緒にいる俺たちにそんな年齢差があるなんて誰も気付きませんよ。32と47の歳の差なんて大したことないです」
「あ、そ」
「つれないなー。俺必死なのに」
「あはは」
話すたびに庄司くんとの距離は詰まって行くみたい。
すっかりリラックスして楽しい。
こんな気持ち久しぶりかも知れない。