ショコラ~愛することが出来ない女~

 満腹になって、店を出る。
アルコールを飲んだわけでもないのに、私の足取りは飛ぶように軽い。
カバンを振りながらステップでも踏むように歩く。

だけど駅前まで来て、ここが『ショコラ』の最寄り駅だったことを思い出す。

あのアーケードをこえて行けばある。
そこに彼が居る。

今日は何をしてる?

またクリームとにらめっこ?

あなたの目に映るには、おいしいスイーツになるしかない。


「康子さん?」

「……え」

「どうかしました?」


不審そうに庄司くんが覗きこんできて、私の視界から風景が消えて行く。


「何でもない」

「……の割には、なんか変な顔してますけど」


一体どんな顔をしているのやら。
ひきつってそうな自分が嫌だ。

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