ショコラ~愛することが出来ない女~
「そんなことない。……帰るわ」
真剣な表情になった庄司くんは少し怖い。
また追い詰められたらと思うと落ち着かなくなって、足早に駅構内へと向かう。
「待ってください」
手首を掴まれて、体がバランスを失う。
転びはしなかったけれど、後ろから来た庄司くんに寄りかかる格好になった。
「いつかまた時間をとってもらうつもりだったんですけど。やっぱり今日言います」
「え?」
「離婚したんです」
「はぁ?」
駅構内の一角で、立ち止まって見つめ合う。
いきかう人々はチラチラこちらを見ては、ホームに滑り込む電車の音を聞いて小走りに行きすぎる。
塾帰りなのか学生服の子供もいて、こちらは遠慮なしに口笛を吹いて冷やかして行った。
さすがに恥ずかしくなって逃げる素振りをすると、彼は私を囲い込むように腕を掴んだ。