ショコラ~愛することが出来ない女~


「だから康子さんじゃないと困るんです。資格があれば、口説いてもいいって言いましたよね」

「それは……言った」

「俺と付き合ってください」


落ちる。

そう思った。

笑顔でそう言い放つ彼に落ちる。


私の事情なんかそっちのけでまっすぐに懐に入ってくる彼は、今私の心に居場所を作った。

それはものすごく自分勝手な論法で。
あっけにとられるほどの勢いを持って。

迷う私をぐいと引っ張って行ってしまう。


「庄司くん」

「俺ってお勧めですよ。仕事だって真面目にやりますし。好きになったら一途ですし。
愛されたい康子さんにぴったり」

「でも私、こんなに年上だし……」

「康子さんは絶対長生きしますよ。女性の方が平均寿命が長いんだし、俺ぐらい若い方が康子さんの老後楽しいですよ」

「老後の心配までする?」

「しますよ。そのくらいまでずっと一緒にいたいですから」

「何言ってんのよ」


思わず噴き出してしまって、そのまま笑い続ける。
浮かんでくる涙は、笑い涙か嬉し涙か。

前者であると彼には思って欲しい。

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