ショコラ~愛することが出来ない女~
「……場所変えましょうか。ゆっくり話したいんですけど」
「そうね。うちに来る?」
触れあっていた体を離して、歩きだす。
周りを確認する勇気はなかった。
ただ今の勢いを、失いたくなかっただけ。
「電車、きっとすぐ来るわ」
少し駆け足になってホームへと向かう。
庄司くんは少し遅れてついてきた。
やがてやってきた電車に乗り込むと、何故だかホッとした。
横に立つ彼に頭を預けると、当然のように肩を抱いてくれたので、安心して目を閉じる。
私はこれで変われるだろうか。
あなたを思い出にして、力を抜いて暮らせるだろうか。
そうしたいと思うようになったのは、年を重ねたせいかもしれない。
……隆二くん、サヨナラ。
流れる車窓に静かに誓う。
私はようやく次の恋を始めたんだ。
だから、きっと飛び立てる。
こんな卑屈で不毛な愛情からは。