ショコラ~愛することが出来ない女~
夜は庄司くんが私の家に来ることが多かった。
一応私には皆の監督責任があるため、大抵は私の方が後。
歩きすぎて痛む足を引きずって帰ると、電気のついた家がお出迎え。
それだけで気分は上がってくる。
「ただいま」
「康子さん、お帰り」
似合わないエプロン姿で現れて、右手に串を持ちながら、「焼き鳥作ろうよ」なんて笑う。
週末くらいしかしなかった自炊も、庄司くんと付き合いだしてからは毎日になった。
一人の時間が少なくなったから、必然的に隆二くんのことを思い出す時間も少なくなっていく。
忘れられる。
変に自信を持ってそう思った。
もう、疲れたからって隆二くんに甘えに行くような生活をしなくてもいい。
私はきっと次の一歩を踏み出したんだ。