ショコラ~愛することが出来ない女~
その週末、詩子の仕事終わりを狙って待ち合わせをした。
「母さん、久しぶり」
「久しぶりね。お誕生日おめでとう」
詩子は22歳になる。
15から一緒に暮らしてないんだから、もう7年?
時々会ってはいるけれど、やはり会うたびにどこか変わったような気がして、ついまじまじと見てしまう。
「服? ありがとう。あたし、最近買い物も行ってないから」
「そうなの? デートとかは?」
「相手も暇もないわよ」
それを苦にもしてないように言う。
やはり男親と暮らすと、どこか男っぽくなっちゃうのかしら。
「詩子、ごめんね」
「何が?」
「ううん」
自分のことばかり考えて、私は詩子の将来についてちゃんと考えてあげたことがあっただろうか。
せっかく美人に生まれたのに、父親の喫茶店のためにあくせく働かせるなんて、可哀想だったかもしれない。