ショコラ~愛することが出来ない女~
食事を終えて、詩子は夜の空を受け止めるように手を広げる。
「おいしかった。ありがとう母さん」
「うん、またね。詩子」
「……今日は、父さんの事聞かないんだ?」
上目づかいで、なかなかに鋭いところをついてくる。
子供は侮れない。
今まで毎回聞いてたっけ、なんてこっちは思っているというのに。
「……元気なんでしょ」
「ウザイほどに」
「ならいいわ」
「そう?」
出来るだけ思い出さないように。
心が疼かないように。
私は怖がっているのかな。
隆二くんを思い出すたび、私は言い聞かせるように理由を探す。
それがもう恋ではないのだと、何度も何度も言い聞かせる。
それが出来ないときは……。