ショコラ~愛することが出来ない女~
詩子の背中を見送ってから、おもむろに携帯電話を出す。
今の時代は便利だわ。
すぐ誰かと繋がることができる。
「もしもし」
『康子さん? どうしたの』
「会いたいわ。今どこにいるの」
『今日は娘さんと食事じゃなかったの?』
「終わったの。……ねぇ、どこにいるの」
心が迷うときは、頼れる人に頼る。
それはずるいような気もするけど、確実に忘れるための方法だとも言えるだろう。
新しい恋が、早く古い恋を乗り越えてくれることを、切実に願っているのはこの私だ。