ショコラ~愛することが出来ない女~
「お前たちが熱愛関係にあるっていうヤツだよ」
「……それなら本当です」
「康子さん!」
この食わせ者の社長に隠し事しようったって無理だ。
まして噂になっているなら。
社長は白髪混じりの前髪をかきあげると、渋い顔を見せる。
「……まいったな。お前の恋愛話を聞きたいとは言ったがな、桂木。
ちと、時期と相手が悪い。
お前も分かってるんだろう?
編集長が部下を食うのは褒められたもんじゃない」
「はい」
「ちょっと待ってください。俺です。俺が彼女に言い寄ったんです」
「いいのよ、庄司くん。例えそうだとしても立場上私の方に責任があるの。そうですよね、社長?」
「そうだ。分かってはいるんだな。
まして、【EAST WEST】編集部はまだ安定してない。ここで波風を起こすなんてらしくないじゃないか」
「それはまあ、反省してます」
ぺこりと頭を下げる。
まあそんなことしても、社長の怒りが収まるわけじゃないだろうけど。