ショコラ~愛することが出来ない女~
一口含めば口の中でとろけていく。
適度な甘さに適度な酸味。
いい。完璧だ。
「あの、作った方に会いたいんですけど」
「え?」
「パティシエさんの取材もさせてください」
そのホテルのオーナーさんは、ちょっと戸惑ったように厨房へ入って行った。
私は許可をもらう前から、ゆっくりとその後をついて行く。
これは常に両親に感謝するとこだけど、私は容姿が格段に良い。
街を歩けばナンパされるのは日常茶飯事だし、大学のミスコンテストでも優勝した事がある。
見た目の良さというものは、深く付き合わない分には有利なことの方が多い。
私の勝手な行動は、大概は好意的に受け止めてもらえる。
「康子ちゃん、ちょっと待てよ」
同行していたカメラマンの福ちゃんこと福井良成(ふくい よしなり)が戸惑いがちに声をかけてくるけど、聞いてられるもんか。
勢いよく扉を開け放つ。