ショコラ~愛することが出来ない女~

 お昼の後、庄司くんは別部署の人間に呼ばれて出て行く。

もう手配を整えたのか? 
あの社長はホント侮れないな。じいさんのくせに。


庄司くんがいなくなると、皆の視線が一気にこちらを向く。

それは憐みだったり非難だったり、感情は向ける人によって色々だ。

気にしないで仕事しなきゃ。
やることは一杯ある。

レイアウトチェックの後は、広告主との企画すり合わせだ。
書類とにらめっこしていると、コーヒーがぽんとおかれた。

顔を上げると森宮ちゃんが立っていた。


「康子さん、大丈夫ですか?」

「平気よ。森宮ちゃん。仕事してる方がいいの」

「でも、なんか」

「大丈夫だってば」


辛い顔なんか、見せたら負けだ。
仕事にはプライドがある。
負けたくない。

手を振って心配そうな視線を追いだし、入れてくれたコーヒーを一口含む。

苦い。

給湯室には普通のインスタントコーヒーとスティック式の加糖のものがあるのだけど、森宮ちゃんはブラックをセレクトしたらしい。

私ってこういうイメージかなって思ったら、ふっと目がうるんでくる。

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