ショコラ~愛することが出来ない女~
「どんな時も編集長は変わらないですね」
「え?」
「……なんでもないです」
その視線に、口の中が苦くなる。
自分のデスクに戻って、パソコンを立ち上げる。
画面に見入ってるふりでもしないとやってられない。
でも今度はディスプレイがまぶしい。
メールチェックしようと思ったのに、全然字面が頭に入ってこない。
だって他にどうしたらいいの。
いい年した女が、社内恋愛を否定されたくらいで大騒ぎすればいいの?
それとも、仕事なんか投げ出して彼に会いに行けばいいの?
私が取り乱して仕事出来なくなって、困るのは誰?
皆を統括する責任がある以上、そんなこと出来ないじゃない。
苦い、苦い。
口の中が苦くて堪らない。
「……今日は帰るわ。皆も無理しないで」
「はい、お疲れ様です」
そそくさとPCの電源を落とし、残ってる人に声をかけて外へと出る。
ふと携帯を見るとメールを受信していた。
【家で待ってる】
それは庄司くんからのもので。
嬉しいような困るような変な感情が沸いて出る。