ショコラ~愛することが出来ない女~
だって今庄司くんに会って、なんて顔をすればいいの?
彼が落ち込んでいたら、慰めなきゃいけない。
彼が憐れんでくれたら、強がらなきゃいけない。
そのどっちも、今私がしたいことではない。
「……家にも帰れないわね」
溜息とともにそんな言葉が漏れだして苦笑する。
仕方なくふらふらと歩き、いつものように電車に乗り、車窓を眺める。
今日はほとほとついていない。
電車は混んでいて座ることは出来なかった。
ヒールの足がジンジンと痛んでくる。
そして、『ショコラ』の最寄り駅。
考える間もなく、衝動的に降りていた。
ダメ。恋人もいるのに。
何を考えてる? 私。
なのに、口の中が苦くて、甘みが欲しくて堪らない。
ケーキを買うだけ。
そう、それだけ。
自分に言い聞かせる。
止まらない足に理由が欲しい。
後は砂糖の一杯入ったキリマンジャロコーヒー。
私の一番好きなもの。
それが欲しいだけなんだから。
責められることなんかないでしょう?