ショコラ~愛することが出来ない女~

『ショコラ』の明かりが、暗くなった通りを照らす。
もう詩子は仕事を終えているはずで、別の学生バイトさんがきてる時間だ。

ゆっくりと店内に近付くと、どちらかと言えば夕食の時間だからか、店内にはお客は数人しかいない。

でも、そのうちの一人に、目が釘付けになる。


「……森宮ちゃん」


カウンターに、森宮ちゃんがいた。

どうして?
彼女は知ってたっけ?
ここが私の元旦那の店だなんて。

咄嗟に中から見えないように壁に体を押し付ける。

息が苦しい。
口の中がどんどん苦くなる。

カウンターにはバイトの女の子と若い男の子。
そして、なぜか隆二くんまでいる。

久しぶりに見た隆二くん。

髪は染めているのか今も黒いまま、目尻にしわを寄せている。
長い指で店の一角を差しながら何か話している。


あの手が好きだった。
今も。
見るだけで衝動的に自分のものにしたくなるほど。


だけど今、彼は店の外に隠れている私には気付かない。
店内で、店員2人と、森宮ちゃんと一緒になって話している。

普段は厨房から出てこない癖に。
どうしてそこにいるの?

森宮ちゃんが言ってた、年の離れた気になる彼って隆二くんの事?


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