ショコラ~愛することが出来ない女~
ああ、そうだ。
庄司くんが居るんだっけ。
そう思ったら足が止まってしまった。
今の顔をどう説明すればいい?
それに、普通の話さえ上手く話せそうにもないのに。
でも逃げるところもない。
どこにも行けない。
私は一人だ。
仕方なく、ゆっくりと足を踏み入れる。
玄関の開いた音に反応したのか、すぐに庄司くんがリビングから出てくる。
「遅かったじゃないですか」
「……うん」
「飯、作っておきましたよ」
「うん。……ありがとう」
顔が見れない。
俯いてるのは不自然だ。
何とかしなきゃ。
庄司くんはやけに明るい調子で私の前を歩く。
「旨いですよ。時間あったんでこってり煮ました。ビーフシチュー。疲れてるときは肉ですよね」
「……そうね」
確かにいい匂い。
でもね。洋食系の匂いはあの人を思い出す。
目の前を先ほどの光景がちらついて頭が混乱していく。
私って嫌な女だ。